バチスタ手術は1994年ブラジルのバチスタらにより始められた、末期心不全心に対する新しい外科治療法である。手術は拡大した心臓の左室自由壁の一部を切除し左室容量を減少させるもので、左室拡大に伴って過伸展された左室壁が、手術でウォールテンション(wall tension)を低下させることによってゴムのごとく厚みを増すと考えられているが、その心機能改善機序には不明な点も多い。クリーブランドのマッカーシーらの追跡調査によると、術後12カ月、24カ月、30カ月での生存率はそれぞれ80%、71%、68%であったが、心不全には至らなかった率は49%、35%、29%と、必ずしも一様に良好ではないとされている。バチスタ手術のほとんどは左室の先端部を切り取るが、最近、心房に近いところを切り取ることによる検討も行われている。バチスタ手術の直後は心不全の回復を認めるものの、長期経過は必ずしも心臓移植に比し良好とはいえず、現時点では心臓移植への橋渡し的治療法と考えられている。