1991年にDefronzoらが提唱した、肥満、インスリン非依存性糖尿病、高血圧、動脈硬化性脳血管障害、脂質代謝異常、高インスリン血症を合併する症候群。インスリン抵抗性とは、肝臓や、末梢組織(主に筋)等においてインスリン感受性が低下し、膵臓の分泌したインスリン量に見合った代謝が得られなくなる状態を指す。膵臓のインスリン分泌能が障害されていない段階では、血糖値を一定に保つための代償機構が働いて、膵臓からのインスリン分泌が亢進し高インスリン血症を伴う。インスリン分泌量がインスリン抵抗性を凌駕できなくなると、糖尿病を含む耐糖能異常が出現する。末梢脂肪組織における脂肪分解の亢進、末梢組織におけるLPL活性の低下の結果、血中にはVLDLやカイロミクロンなどのリポたんぱくや、その中間代謝産物であるレムナントが増加し、TGrichリポたんぱくの異化過程で生じるHDLコレステロールが減少する。また、高インスリン血症下では、腎尿細管における体液・Na+貯留の促進、交感神経系の賦活、インスリンの持つ成長促進作用による血管壁肥厚・血管抵抗性の上昇などの機序により血圧が上昇する。このように耐糖能異常、脂質代謝異常、高血圧、肥満などの根底にはインスリン抵抗性および高インスリン血症の問題があると考えられている。