ネフローゼ症候群とは一つの疾患名ではなく、腎糸球体障害により高度のたんぱく尿とそれに起因する低たんぱく血症、浮腫、および高脂血症を呈した病態の総称である。厚生労働省特定疾患調査研究班による診断基準では、(1)たんぱく尿(1日3.5グラム以上持続)、(2)低たんぱく血症(血清総たんぱく6.0グラム/dl以下、血清アルブミン3.0グラム/dl以下)、(3)高脂血症(血清総コレステロール250ミリグラム/dl以上)、(4)浮腫、の4項目のうち(1)(2)が必須条件で、この2項目でネフローゼ症候群と診断される。(3)(4)は必須条件ではないが、高頻度に認められる。また尿沈渣中の多数の卵円型脂肪体や重屈折性脂肪体の検出は、本症候群診断の参考となる。原因疾患として、すべての一次性糸球体疾患がネフローゼ症候群を呈し得るが、微小変化群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎が代表疾患である。二次性糸球体疾患では、糖尿病、全身性エリテマトーデス、アミロイドーシスなどが原因となる。治療は、二次性糸球体腎炎の場合は原疾患の治療が重要となる。一次性糸球体疾患の場合は、腎生検結果に基づく適切な治療法の選択が必要であるが、主に副腎皮質ステロイドが治療の中心となる。治療に反応しない難治性の場合は、副腎皮質ステロイドに加え免疫抑制薬やLDL吸着療法を実施する場合もある。免疫抑制薬の代表例はシクロホスファミドとシクロスポリンであり、ステロイド抵抗例でたんぱく尿の減少効果が、頻回再発例でステロイドの減量効果と再発頻度の減少が認められている。ただし、腎毒性、肝障害、易感染性等の副作用があるため、使用ガイドラインに従った投与が必要である。LDL吸着療法は、体外循環にLDLコレステロールを比較的特異的に吸着するカラムを装着して、LDLコレステロールを分離、除去する方法で、特に巣状糸球体硬化症において尿たんぱく減少効果が報告されている。