わが国の慢性糸球体腎炎の約半数を占め、10歳代後半から40歳までの比較的若年齢層にみられる。健康診断または偶然の機会に顕微鏡的血尿、あるいは血尿と軽度のたんぱく尿で発見されることが多い。本症の80~85%は顕微鏡的血尿が持続し、たんぱく尿は陰性もしくは軽度(1日1.0グラム以下)のことが多い。組織学的には光学顕微鏡でメサンギウム細胞および基質の増加を示し、蛍光顕微鏡でメサンギウム領域にIgAの沈着を認める。以前は予後良好の疾患と考えられていたが、最近では成人症例において腎生検施行後の20年間で38%が末期腎不全のため血液透析導入に至ったという報告がなされ、その一部は慢性進行性疾患と考えられている。持続性の血尿とたんぱく尿が認められる場合は腎生検を施行し、予後予測、および治療の指針とすることが望ましい。治療は腎保護作用を持つアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン2受容体拮抗薬が選択されることが多い。また疾患活動性の高い群では扁桃摘除術、さらに副腎皮質ステロイドも投与される。小児では免疫抑制薬を併用することもある。尿たんぱくが多く、比較的腎機能が保たれている早期例では、ステロイド投与群の方が非投与群よりもその後の腎機能が保たれているという報告もあり、早期治療の重要性が認識されつつある。健康診断等でたんぱく尿や血尿、特に前者が指摘された場合は本疾患を疑い、腎臓内科医を受診することが肝要である。