門脈圧亢進症に起因する食道・胃静脈瘤および難治性腹水に対し、経皮的に門脈―肝静脈間に短絡路を作る治療。この方法としては、おもに頸静脈より肝静脈内に挿入したカテーテルより門脈を穿刺し、先端に風船のついたバルーンカテーテルで短絡路を拡張した後、ステントを挿入・留置し短絡路を維持する。TIPSの適応は内視鏡的硬化療法が無効な食道・胃静脈瘤と難治性腹水とされており、消化管出血では門脈圧の低下とともに良好な止血効果が得られている。また、合併症としては腹腔内出血、門脈損傷、肝管・胆嚢損傷、敗血症、ARDS、肝機能低下等がある。危惧される術後の肝性脳症は比較的少数で、薬物でコントロールできることが多い。短絡路の血流の維持の確認は、ドップラーエコー検査を用いて行うようになってきているが、術後に血栓や血管内膜肥厚により狭窄ないし閉塞のために、1年以内に再治療を必要とする例が約70%と高率であり、今後の問題とされる。最近では、肝硬変に合併した胸管皮膚瘻や直腸肛門静脈瘤、肝腎症候群に施行し改善が得られたとの報告もされている。