旋盤に指を巻き込んだり、ドアに指を挟んだために生じるような指先の損傷や切断では、切断部を再接着できればよいが、傷口の挫滅がひどく、再接着が難しい場合もある。このような場合、損傷部の組織や骨を部分的に取り除き表皮を縫い縮めて傷をふさぐという断端形成術が以前は一般的であったが、傷口の止血と消毒をしてアルミホイルで覆い、傷口の潤いを保ち、指先が自然に治るのを待つというアルミホイル被覆療法もある。近年この単純な治療法が断端形成術と同等かそれ以上の効果を上げることが報告されている。そもそも肉芽組織は乾いた環境よりも湿った環境の方が治癒が早い、という原理を利用して1972年にオーストラリアの小児科医が、小児の指先の損傷の治療法として開発したのが発端であるが、日本国内でも簡便さと成績の良さから各地で実施されているケースが増加している。このアルミホイル被覆療法の利点として、手技が簡単なこと、断端形成術と違い指の長さを温存でき外観上むしろ自然に近い形となることも多いこと、指先の感覚も戻りやすいこと、治療後の疼痛や圧痛も少ないことなどがあげられる。特別な医療機器も必要とせずにもともと人間のもつ自然治癒能力を生かしており、手技も簡便などの観点から特に傷口の再接着が難しい症例に対して評価が高まっている。