腎臓は体内の老廃物や余分な水分を尿として排泄する以外にも血圧調節、造血ホルモン分泌、ビタミンD活性化など多彩な役割を担っている。このうち特に老廃物や水分の尿中への排泄機能が低下した状態を腎不全という。脱水・ショック・熱傷(やけど)・一部の腎炎・薬の副作用などにより急激に発症する腎不全を急性腎不全という。急性腎不全は重症となることも多いが、原因が速やかに除去できれば腎機能が回復する可能性も高い。これに対して、長い経過を経て徐々に進行する腎不全を慢性腎不全という。慢性腎不全の原因はこれまで慢性糸球体腎炎が最も多かったが、近年、糖尿病性腎症が急激に増加している。慢性腎不全は急性腎不全と異なり治療による腎機能の回復があまり期待できない。原疾患の改善や食事療法・合併する高血圧や貧血の治療によってある程度進行を遅らせることは可能であるが、やはり原因となる腎臓病の早期発見・早期治療が重要である。通常、腎不全が進行し腎機能が正常の10分の1程度まで低下すると透析治療が必要となる。透析治療を必要とする患者は年々増え続けており、医療経済上も大きな問題となっている。近年、わが国において学校検尿の普及により若年者の血尿・たんぱく尿が比較的早期に発見できるようになったことは予防上、非常に有意義なことである。