クリプトスポリジウムは腸管に寄生する原虫の一種である。家畜や野生動物などに幅広く寄生し、排泄物と一緒に川などに流れ込み、水道水、河川水を介して短期間のうちに不特定多数のヒトに感染することもある。ヒトにおける寄生は1976年に最初に報告されており、以来欧米では毎年のように報告され、集団感染症の病原体として重要視されている。わが国では94年には神奈川県において461人が集団感染し、96年には埼玉県越生町で全町民の7割にあたる約9000人が下痢になるという大規模な集団感染が発生し注目されるようになった。主な症状は下痢、腹痛、発熱、嘔吐であり、駆除する強力な薬は今のところないが、免疫機能が正常であれば1~2週間で自然に治癒する。通常浄水設備で感染は予防できるが、浄水設備が不十分な水では通常使用される消毒薬では効果はほとんど期待できないため、加熱することが必要である。