幅広く総合的な診療能力を有する医師を、一つの専門医と見立てた呼称。日本の医学教育は、アメリカ式専門医養成の流れの中にあり、ほぼ全ての医学生が何らかの専門医の道を歩んできた。専門分化が激しくなる一方、高齢化に伴って複数の疾患をもつ人が増え、また初期診療とその後の専門医へのふり分けという、従来の専門医とは違った意味での高度な専門家が必要となってきた。一線で従事する医師の間では、こうした総合的な診療を請け負う医師の必要性が唱えられ、家庭医、総合医、医療判断医などの創設が試みられたが、いずれも国の医療制度として確立していない。このほど、日本の専門医制度の下に、総合診療専門医というカテゴリーが誕生した。しかし、他の専門医に比べて問診や基本診察に時間が必要な半面、医療報酬の規定などがなく、名前だけが一人歩きする可能性が高い。抜本的な医療全体のシステム改革が望まれるところである。