火事や火山噴火などに直面した時に、外気と一緒に熱や煙を吸入することで生じる呼吸器系の障害の総称。原因によって、(1)熱による障害、(2)煙に含まれた有毒化学物質による障害に分類される。熱による直接の障害は上気道(咽頭および喉頭)までにとどまることが多いが、有毒化学物質によるものは上気道より末梢である気管、気管支、肺胞が主に障害される。病態としては、上気道型だと浮腫にともなう上気道閉塞を引き起こし、気管、気管支、肺胞型は進行性の炎症によって肺炎を呈することが多い。また、気道熱傷の多くは症状が出現するのが数時間後だが、その後の進行は急速なため注意が必要である。近年では、長野・岐阜県境に位置する御嶽山の噴火(2014年9月)の際に多くの負傷者が気道熱傷を受けたと報告されている。火事などの際には、皮膚の熱傷を避けるのも重要だが、それと同時に熱や煙をできるだけ吸い込まないようタオルや手拭いで口を押さえることも大事である。