手術等によって母体の卵巣から排卵直前の卵子を取り出し、培養基に移して精子を加え受精させる生殖補助医療である。この受精卵を48時間後に膣を通して子宮に着床させるのが一般的な体外受精・胚移植(IVF-ET ; in vitro fertilization and embryo transfer)であり、卵管閉塞などに有効である。1977年イギリスで初めて行われ、翌年第1号児が出生、日本では83年に成功した。また、99年に実施され始めた胚盤胞移植(blastocyst transfer)では、受精卵を5日ほど培養して胚盤胞になってから移植する。培養に高い技術が必要であるが、妊娠率が高くなる。そのほか、体外で受精を確認することなく、卵と精子の混合物を卵管内に移植する配偶子卵管内移植、すなわちギフト法(GIFT ; gamete intrafallopian transfer)がある。また、精子の数が極度に少ない、動きが悪い等の原因により、顕微鏡を見ながら、卵子と精子を操作して授精させる顕微授精(micro-insemination)もある。顕微授精は、卵子の細胞質内に精子を直接注入する卵細胞質内精子注入法(ICSI ; intracytoplasmic sperm injection)が主に行われる。これらの体外受精は夫婦間で行うのが原則である。日本の実施登録施設数は毎年増加し、2005年末には641カ所になり、05年には1万9112人(全出生児の1.8%)が生まれた。厚生労働省の生殖補助医療部会は、夫婦間以外の体外受精に関して、「それを受けなければ妊娠できない夫婦に限って、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療(非配偶者間生殖補助医療)を受けられる制度の整備」として以下の6つの条件等を03年4月に報告した。(1)精子提供者は満55歳未満の成人、卵子提供者は既に子どものいる成人に限り、満35歳未満とする。(2)精子・卵子・胚の提供にかかる金銭等の対価の授受を禁止する。(3)提供者は匿名とする。(4)兄弟姉妹等の匿名性が保持できない者からの提供は、当分の間認めない。(5)事前に当事者夫婦の書面による同意をうる。(6)当事者夫婦に対し、十分な説明を行いカウンセリングの機会を保障する。