産後に強い悲嘆と、それに関連する心理的障害が発生するうつ病である。出産前後は、ホルモンのバランスが変動するので、誰でも精神感動を受けやすい。出産直後の母親に見られる不眠や不安、ふさぎこんだ状態などをマタニティーブルー(maternity blues)といい、産婦の半数近くが経験する。ほとんどの場合は、一過性で体調の回復とともに通常2週間以内に治まる。しかし、それが長引いたり、また産後2週以降、約10%の女性はうつ状態(postpartum depression)になり、数カ月間ほど続くことがある。予防や治療、また児童虐待防止の観点からも、出産後3カ月間ほどは、過労や睡眠不足に注意し、パートナーを始めとする周囲からの援助や支援が大切である。明らかに理解しがたい行動が見られる場合は、精神神経科を受診する必要がある。約1%、ことに遺伝素因のある母親は、抗うつ薬などの治療が必要なうつ病となる。