年間子ども1万人に約1人の割合で小児がんが発生し、その約34%が白血病、次いで脳腫瘍、神経芽腫などである。30年前には、小児がんすなわち死という考え方が一般的であったが、最近は、診断技術と治療の進歩に伴って小児がんの予後はめざましい改善がみられ、全体的な治癒率は50%を超えている。その間、患児・家族と医療者の関係も大きく変わった。個人の権利が前にもまして尊重されるようになり、インフォームド・コンセントが望まれている。また、予後改善に伴って、年長児では教育や就職に対する配慮も必要となっている。2004年の厚生労働科学研究によれば、15歳未満児の約1004人に1人は小児がんと闘いながら生活していた。がんにかかった子どもの成長発達は、時には緩やかになったり退行することはあるが、長い目でみると確実に成長発達を続ける。がん疾患そのものやその治療過程は複雑で、様々な問題を抱えているが、子どもの日々の生活の中で子どもが持っている能力を少しでも引き出せるよう、周囲の人々は環境を整えながら見守りたい。不幸にして最期の日がくるようでも、その日まで子どもは発達を続けていることを理解し、死を迎える心の準備も含めて援助の視点を見失わずにかかわることが大切である。