乳幼児のロタウイルス胃腸炎を予防する、経口弱毒ヒトロタウイルス生ワクチン。イギリスの製薬会社グラクソ・スミスクライン(GSK)が、製造販売を行っている。ロタウイルス胃腸炎は、乳幼児感染性胃腸炎のうち最も頻度が高く、ほぼ世界中の乳幼児が経験する疾患である。冬期に流行が多く、嘔吐(おうと)をともなう白色下痢便を特徴とし、40人に1人の割合で重症化がみられる。中枢神経や腸重積などの合併症もある。発展途上国では乳幼児の主な死因とされ、先進国では5歳未満児の下痢症入院児の半数がロタウイルスによる。ウイルスの遺伝情報を担うRNAは安定した2本鎖で、感染力が強く、アルコールは無効で、有効な治療薬もない。これまで海外で2種類の経口弱毒生ワクチンが開発されたが、効果に差はなく、いずれも感染自体は防げないが重症化は防げる。このうち、どちらか一方を認可している国は100 カ国以上ある。日本では2011年7月に、厚生労働省がGSKの「ロタリックス」の製造販売を承認し、現在は有償による任意接種ができる。他社のワクチンがヒトロタウイルスの抗原を牛ロタウイルスに組み込んだものに対し、ロタリックスは人間に感染する流行株を弱毒したものである。