子どもの病気を治療するため、小児科領域で使用される医薬品のこと。2007年の厚生労働省研究班の報告によると、小児用医薬品の70%は、成人用の薬を減量するなど加工しただけで使われている。しかし本来であれば、小児は体や臓器が発達途上にあるため薬物の吸収、代謝、排せつなどの薬物動態が成人とは異なる。関連して安全性や効果も異なる。年齢や発達段階により、使用できる剤形も異なる。そうした中で、現実には有効性や安全性に関するエビデンスがないことから、適正な用法・用量さえ決められず、副作用を心配しつつ薬を服用しなければならない。01年度から8年間に新薬として承認された医薬品で、小児への使用が少しでも認められたものは16.8%にすぎなかった。小児用薬を開発するためには、子どもを対象とした臨床試験(治験)が必要だが、患者数の少なさ、年齢による体格差の問題、医療機関の体制不備、偏見や認識の低さなどの理由から製薬企業はおよび腰である。そこで厚生労働省は、外国で承認された薬の適用拡大、人材育成、体制や施設の整備を始め、11年に小児治験ネットワークを立ち上げた。