漢方医学における病態把握法の一つ。「体質からの虚実」と「病毒からの虚実」の二つの意味がある。「体質からの虚実」は、「実証」と「虚証」に分かれ、前者に属するタイプは、(1)筋肉質でがっしりした体格、(2)食べるのが早くて食事を抜いても気にしない、(3)活動的で疲れにくいなどの人である。一方、「虚証」とは、(1)痩せている、水太りタイプの体格、(2)胃腸が弱く下痢をしやすい、(3)とにかく疲れやすくて抵抗力がないなどの特徴がみられる。しかし、体格は参考にはなるものの、それだけで判断するのは禁物である。一見、体格では「実証」のようにみえても、体の中身は「虚証」の場合もあり、また、その逆のこともある。なお、実際の臨床では、どちらか一方だけに偏ることは少なく、総合的にみて虚証と実証の座標軸上でどのあたりに位置するのかを判断することが多い。慢性疾患を扱う際には「体質からの虚実」は有用であるが、急性病においては、病毒と生体反応の関係から考えることが必要な場合もある。「病毒からの虚実」とは、病気に対する反応によって虚実を判断する方法である。闘病反応が激しく現れる状態は「実」と考えられ、一般的には体力が強く、普段から病気に対して抵抗力がある人が病気になった場合にみられる。一方、病気に対する抵抗力が低下した人は、病気に対する反応も低下しており、「虚」の状態と考える。例えば、免疫力の低下している高齢者は、かぜをひいても発熱せず、白血球増多などの炎症反応もみられにくいというのは、「虚」の反応と捉える。