漢方医学における病態把握法の一つ。体温の高低にかかわらず、自覚的に全身や局所が寒く感じる場合を「寒」といい、この場合は温めると楽になるという特徴がある。反対に、熱っぽく感じる場合は「熱」の状態であり、冷やすと調子がいいことが多い。例えば、40度の高熱であっても寒気がする時は「寒」と考え、これを「寒証」という。自覚的に冷感・悪寒を感じたり、寒がりや冷え症などの体質を持ち合わせていたり、慢性的な下痢や、身体が冷えると頭痛・腹痛などの症状がみられる。一方、「熱」の状態にある「熱証」は、自覚的にほてりやのぼせがあり、口渇のため冷水を飲みたいなどの症状がある。多くの場合は、全身と局所の「寒熱」は一致するが、アトピー性皮膚炎や関節リウマチなどでは、全身的には冷感を訴えても皮膚や関節に発赤や熱感がみられることもあり、寒熱が交錯している場合もあるので注意が必要である。また、「寒」の程度があまりにもひどくなると、あたかも「熱」のように感じることもあり、これを「真寒仮熱(しんかんかねつ)」という。「陰陽」と「寒熱」との関係は難しく、ほぼ同義で使用したり、または「陰陽」は全体を表す場合に用い、「寒熱」は局所を表す場合に用いる場合もある。