認知症患者には、記憶障害や判断力低下のほか、徘徊(はいかい)、不眠、興奮、抑うつ、焦燥といった問題行動や精神症状が認められる。前者を中核症状、後者を周辺症状という。漢方薬の抑肝散(よくかんさん)は、周辺症状の一部を改善する効果が報告されている。例えば、幻覚、興奮・攻撃性、焦燥・被刺激性、異常行動などを改善できるため、患者の介護もしやすくなる。さらに抑肝散は、認知症患者の介護者が精神・身体的ストレスを受け続けることで生じる、さまざまな症状にも有効とされている。古来中国では、小児の夜泣きや癇性(かんしょう)などに用いられていた。現在は小児だけでなく、いらいら、易怒性(いどせい)、不眠などの神経症をはじめ、眼瞼(がんけん)けいれん、こむら返り、手足のふるえなどを呈する大人にも使用される。胃腸が弱い人には、抑肝散に陳皮(ちんぴ)、半夏(はんげ)を加えた、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)を用いることが多い。