人間が日頃身の回りで起きるできごとについて理解したり推論したりするときに、いちいち物理学の方程式を立ててそれを解いているわけではない。物理学を知らないような子供でも、ミカンを1個食べれば残りのミカンの数が減ることは知っているし、歩くより車に乗ったほうが目的地に速く着けることも知っている。彼らは量をもち出すことなく定性的な推論を行っているのである。コンピューターにそのような推論をさせるのが定性推論である。多くの推論は具体的な量の情報までは必要としない。重要なのは、増える、減る、変化しない、という定性的な情報である。人間の推論過程のモデル化として興味深いだけでなく、コンピューター上で効率的な推論を行うための道具としても有望である。