燃料が完全燃焼したときに発生する熱量。一般に燃料の単位当たりエネルギー量であるkJ/kg、kcal/kg、J/molなどで表される。その値は、火力発電所などの熱効率を計算するときに重要なデータとなる。熱効率は、発電によって得られる電力量(出力エネルギー)を、投入した燃料の燃焼によって発生する発熱量(入力エネルギー)で割ったものである。発熱量は、反応生成物が液体か気体かで、蒸発の潜熱分だけ異なる。水素分子を含む化石燃料は、燃焼でH2Oが生成される。生成されたH2Oが液体の水の場合、その発熱量は気体の水蒸気に比べて水の蒸発熱40.6(kJ/mol)だけ大きくなる。反応生成物が水である場合、その発熱量を高位発熱量(higher heating value)または総発熱量(gross calorific value)といい、水蒸気の場合を低位発熱量(lower heating value)または真発熱量(net calorific value)という。化石燃料に高位か低位のどちらの発熱量を用いるかによって、熱効率の値が変わってしまう。高位発熱量を用いると熱効率は小さな値となる。どちらの発熱量を用いるかは、燃焼ガスの温度によるが、ボイラー排ガスで煙突から排出される燃焼ガス内の水(H2O)は蒸気の状態である場合が多いことから、実用上は低位発熱量が多く使われている。しかし、日本では火力発電所などの熱効率の計算には高位発熱量を使用している。低位発熱量で計算している海外の熱効率と比較するときには注意を要する。