負極に金属マグネシウム、正極に空気中の酸素、そして電解液に食塩水を使用している一次電池(乾電池)で、空気電池の一つ。マグネシウムはリチウムに比べて資源量が豊富なだけでなく、イオン価が2価であるために多くの電子を放出する。そのため、安価で高いエネルギー密度を持つ電池として開発が期待されている。しかし、電池反応によって発生する水酸化マグネシウムが金属マグネシウム表面に不動態被膜(酸化により金属表面に生じる膜で、内部酸化を防ぐ)を作り、継続して電気が取り出せないという理由から実用化が進んでこなかった。この問題を解決するために、負極にマグネシウムの薄膜を使用し、電解液に水酸化マグネシウムを溶解しやすい補助剤を添加する方法がとられている。また、負極に金属マグネシウム、正極に硫黄を使い、電解質にマグネシウムイオンを伝導できる固体電解質を用いた電池の開発が進んでいる。それは固体型マグネシウム電池と呼ばれているもので、その体積エネルギー密度は理論的には2500 Wh(ワットアワー)と、リチウムイオン電池の5倍以上にもなる。最近は、国内外で実用化に向けた開発や二次電池への応用研究が進んでいる。