分化全能性ともいう。1個の細胞から、各種の組織、器官に分化して、完全な個体を形成する能力のことである。ヒトの体は60兆個、200種類の細胞から構成されているが、受精卵というたった一つの細胞から出発したものである。ほ乳動物では胚の初期発生段階で全能性は失われてしまうが、胚から分離したES細胞は全能性を保持している。植物では1958年、F.スチュワードがニンジンのカルス細胞からニンジン個体の再生に成功し、成長・分化した細胞の全能性を示し注目された。カルス(callus)とは、植物細胞が分化機能を失った状態で不定形の組織塊(細胞集団)として増殖するもの。植物体ではどの部分からもカルスを作ることができ、それを分化させ1個の植物体にまで成長させることができる。