体細胞を使って作製された万能細胞。胚性幹細胞(ES細胞)のように、さまざまな臓器や組織に育つ能力(全能性)を持つ。2007年、京都大学の山中伸弥教授らの研究グループが、ウイルスを運び役にして4個の遺伝子を成人の皮膚細胞に組み込み、作製に成功した。患者の損傷した臓器を患者の皮膚から作ることで、拒絶反応のない再生医療(regenerative medicine)を実現できると期待されている。同時期に、アメリカ、ウィスコンシン大学の研究グループも4個の遺伝子(2個は共通)でiPS細胞の作製に成功したが、更に発表から10日後に山中教授らは、がん遺伝子(c-Myc)を除く3個の遺伝子でiPS細胞を作製した。また、iPS細胞作製には、ES細胞のように受精卵を必要としないことで、倫理的な問題がなく、世界中で熾烈な研究競争が始まった。
最近、増殖の容易で分化能が高い万能細胞はナイーブ型(naive type)で、より分化が進んだものはプライム型(prime type)と、2種類存在することが分かってきた。iPS細胞でもマウスやラットがナイーブ型で、ヒトなど多くの動物がプライム型と分類される。現在、ナイーブ型ヒトiPS細胞を作製する技術が開発中である。