世界最初のヒト細胞株(human cell strain)のこと。1951年にアメリカ人女性であるヘンリエッタ・ラックス(Henrietta Lacks)の子宮頸がん組織からジョージ・ゲイ博士により分離、細胞株として確立された。その細胞は患者の名前からアルファベット2文字ずつを取って、HeLa細胞と名付けて発表された。
50年代当時、切除された組織等の生体材料の使用に関して、患者や家族に対して説明と同意(インフォームド・コンセント)を得ることはなかったため、この細胞はラックスに断りなく培養されたものである。ラックスは51年10月4日に子宮頸がんでこの世を去っており、彼女の子供も20年以上たってからこの細胞の存在を知ったという。その間、HeLa細胞は多くの実験で用いられ、また商業的にも使用されていたが、彼女の家族が利益を受け取ることはなかった。なお、2013年に至り、ラックスの遺族とアメリカ政府は、さらなる研究発展のために協力することで合意した。現在、ヒト細胞の採取、使用に関してインフォームド・コンセントは必須となったが、その細胞に商業的な価値があった場合の細胞提供者への告知や、細胞の所有権については議論が続いている。