1920年代のペニシリンに代表される抗生物質の発見から、天然物(微生物や植物)由来の化合物が創薬を劇的に発展させた。一方、有望な化合物を求めて世界中を探し回った結果、身近に見つかる新規化合物の発見率は徐々に低下していた。さらに、近年は天然物化合物に依存しないハイスループットスクリーニング法(HTS ; high throughput screening 膨大な化合物の中から新規の化合物を短期間に見つけ出す手法)が主流となっていたが、有望な化合物の発見は難しい状況であった。最近、従来は毒性が強く創薬にできなかった海洋生物由来の化合物の構造を改変し、毒性を低下して利用する技術や、培養が困難だった微生物などのゲノム解析から、合成している化合物を予測する技術の進歩で、天然物が創薬の種として再び脚光を浴び始めている。