人工的に細胞を作ろうとする試みが世界的に最先端の研究として進んでいて、国内でも複数のグループが研究を進めている。細胞の定義は、(1)自己複製、(2)代謝、(3)外界との境界の3点である。神奈川大学のグループは、細胞膜に見立てたベシクル(分子の集合体)の閉じた分子膜の袋が、外部から加えられた膜分子の原料を取り込み、膜内でその原料から膜分子を作り出すこと、さらに内部で染色体のモデルであるDNAをその原料を外部から取り込み、DNAを複製させ、孫細胞を作らせることに成功した。このことは、このモデル人工細胞が現実の細胞と同じように、何世代にもわたって細胞分裂様の現象を繰り返しうることを意味しており、(1)と(3)を満たしている。また、東京大学のグループは、DNAが塩基の存在で自動的にたんぱく質を作り出すことに着目し、DNAを利用したたんぱく質製造工場を試験管の中に作ることに成功しており、(1)と(2)を満たしている。現状ではモデルの域を出ていないが、原始地球での生命誕生や、どのようにして原始生命が進化の仕組みを取得したかを知る手がかりになる。