DNA(デオキシリボ核酸)は、化学物質や紫外線による「攻撃」、あるいは複製の誤りなどによって1日に何万回も損傷し、それを放置するとがんなどの疾患の原因になる。DNA修復とは、細胞がDNAの損傷を修復することであり、修復できない場合は、細胞死(アポトーシス)に誘導する。DNA修復方法には、「直接修復」「ヌクレオチド除去修復」「塩基除去修復」の3通りがあるが、修復時にもまた間違いが起こり、それを修復することをミスマッチ修復(mismatch repair)と呼んでいる。この修復を分子レベルで解明したフランシス・クリック研究所のトーマス・リンダール(Tomas Lindahl)博士、デューク大学のポール・モドリッチ(Paul Modrich)博士、ノース・キャロライナ大学のアシス・サンジャール(Aziz Sancar)博士の三氏は2015年ノーベル化学賞(The Nobel Prize in Chemistry 2015)を受賞した。
一方、DNAの異常は、損傷だけでなく、欠失、置換や重複もあり、遺伝情報に致命的なダメージを与えるが、まれに生物に有意義な結果(進化)をもたらす。それが全ゲノム重複(genome Duplication)と呼ばれ、5億年以上前のカンブリア紀に、全ての遺伝子のコピー数が倍に増えた現象である。これにより、余剰な遺伝子から様々な機能を持つ遺伝子が生まれたことで、より複雑な体への進化を促したと考えられている。