生体内ではさまざまな遺伝子の発現開始と停止(オンとオフ)が制御されているが、人為的に遺伝子を患者に導入する遺伝子治療では、目的の部位で適切に発現させるための制御法に大きな課題があった。導入する遺伝子にスイッチを取り付け、必要に応じて確実にオン・オフする研究が進んでいる。スイッチ候補の一つがエクジソン(ecdysone)というホルモンで、昆虫の生死に直結する脱皮を制御している。このスイッチがオンになると脱皮に関連した遺伝子が次々に発現し、中断することなく、脱皮が行われる。この精巧な仕組みを応用して、免疫細胞療法(cellular immunotherapy)と組み合わせた臨床試験がアメリカで実施され、有望な成果が出ている。さらに、スイッチ候補にリボザイム(ribozyme)というRNAを用いる制御法も検討されている。