Environmental Forensicsの訳語で、学術用語としてはまだ定着していないが、環境科学の一分野として存在してきた。裁判、仲裁、公の討論、あるいは公式の論争に関連して、大気、水質、土壌、あるいは生物などの環境媒体の汚染を科学的に探求する学問のことで、環境汚染物質の同定、汚染源、輸送、および環境中運命(化学物質がたどる移動や分解過程のこと)を科学的に探索する。分析化学、地球化学、大気化学、環境運命評価、環境輸送評価、環境法などが環境鑑識学の基礎をなす。
環境汚染が発見された場合、その汚染がいつ、どこからきたか、汚染源は何かを知らなければ、有効な対策を立てることはできない。汚染源が複数ある場合は、それらの間での寄与割合が問題となる。これらを解明するのが環境鑑識学である。また、汚染の浄化対策などを行う場合、日本では公害防止事業事業者負担法によって、原因者に負担(汚染者負担の原則)を求めることができるが、負担を求めるには、科学的証拠の提示が必要となる。
このため環境鑑識学は、過去の地図や航空写真から始まり、産業活動の記録、汚染物質の濃度分布、大気や水の移動と軌跡、汚染物質の組成情報など、多様な情報を総動員して汚染原因と輸送経路を究明することになる。