知床では、日本の世界自然遺産で初めて海域が遺産地域に含まれている。そこは国立公園の普通地域で、定置網などの漁業が行われている。日本の沿岸漁業では、漁業協同組合(漁協)が排他的に漁業を行える権利(漁業権)が存在する。その代わり、漁協は乱獲を避け、持続可能な漁業のためにさまざまな資源管理を自主的に行っている。1990年代に減ったスケトウダラ資源については、知床半島羅臼側の大陸棚にある産卵場の一部について、95年に自主的に季節禁漁区を設けている。
2005年登録申請の時、IUCN(国際自然保護連合)から海洋生態系の保護強化を図るよう求められた。他方、環境省と北海道は登録申請時に漁協に対し、遺産登録に伴う新たな漁業規制は行わないことを確約している。この「矛盾」は、05年2月に漁協が自らスケトウダラの禁漁区を拡大することで解消し、05年7月に知床は世界遺産に登録された。国際的にも、上意下達型の管理に加えてコ・マネジメントの重要性が広く認識されつつある。