シアン化水素(HCN ; hydrogen cyanide)、シアン化カリウム(KCN ; potassium cyanide)、シアン化ナトリウム(NaCN ; sodium cyanide)、シアン化カルシウム(Ca(CN)2 ; calcium cyanide)、塩化シアン(ClCN ; cyanogen chloride)などが主要な無機シアン化合物である。シアン化水素は青酸とも呼ばれ、常温で無色透明の液体か気体で、樹脂、農薬、殺鼠(さっそ)剤等 の原料となる。シア ン化カリウムは青酸カリとも呼ばれ、常温で無色透明か白色の固体で、触媒、農薬、医薬品等の原料となる。シアン化ナトリウムは青酸ソーダとも呼ばれ、白色 の固体で、メッキ工業や貴金属の精錬に用いられる。塩化シアンはシアンイオンを塩素処理すると生成する。シアン化合物は、化学工業や窯業から大気や水域へ 排出されることが多い。無機シアン化合物は呼吸酵素の鉄と結合する ことで強い毒性を発揮する。耐容一日摂取量(TDI)は、シアン換算で体重1キログラム当たり0.0045ミリグラ ム、水道水質基準はシアン化物イオン及び塩化シアンに対してはシアン換算で1リットル当たり0.01 ミリグラムと設定されている。