クロムは銀白色の金属元素。六価クロム化合物には、無水クロム酸(CrO3)、クロム酸鉛(PbCrO4)、重クロム酸カリウム(K2Cr2O7)、クロム酸亜鉛(ZnCrO4)など多くの種類があり、顔料、染料、塗料、メッキ、金属表面処理、酸化剤などに使用されている。単体クロムはステンレス合金として使用され、毒性は知られていない。また三価クロム(Cr3+)は人体の必須元素であり、欠乏すると糖代謝異常が起こる。これに対し、六価クロム化合物は毒性が高く、接触や吸引により手足や顔、あるいは鼻の粘膜やのどに炎症を起こす。クロム酸工場の労働者では、鼻中隔穿孔が発生したことが知られている。国際がん研究機関(IARC)はグループ1(人に対して発がん性がある)と分類しており、肺がんとの関係が認められている。大気汚染防止法で有害大気汚染物質の優先取組物質に指定され、水道水質基準、水質環境基準、および地下水環境基準では1リットル当たり0.05ミリグラム、水質汚濁防止法の排水基準では1リットル当たり0.5ミリグラム以下と定められている。日本国内では、工場跡地で六価クロム化合物による土壌汚染が多数知られており、土壌環境基準は1リットル当たり0.05ミリグラムと定められている。