火山ガスや鉱泉に含まれる腐った卵のような臭いを持つ無色の有毒気体。分子量は34.08、融点-85.5℃、沸点-60.7℃、空気に対する比重は1.19で空気より重い。可燃性で引火性も有する。空気中での爆発限界は4.3~46 v/v(v ; volume)%。空気中で青色の炎をあげて燃焼し硫黄酸化物を生じ、目、皮膚、粘膜に対して刺激性を有する。吸い込むと、頭痛、めまい、せき、吐き気、息苦しさ、意識喪失などの症状を起こす。登山者や温泉客などの死亡事故も報告されている。水溶解度は20℃の場合で100 ml中0.5 gであり、水生生物に対する毒性も強い。自然由来としては、火山ガスの他に、有機物の嫌気的生物分解、つまり酸素を介さない分解過程でも生成するので、有機汚濁の進んだ水域や汚水溜まりも発生源となる。人為由来では、石油化学精製工場の水素化脱硫工程で原油に含まれる硫黄分が除去される際に生成する。日本では、2007年29人だった硫化水素ガスを使った自殺者数が、08年に1056人と急増し、問題となったことがある。