電子は粒子と波動の両性質を持つ。材料中の電子の波長はナノ領域、すなわちnm(ナノメートル nは10-9=10億分の1)領域にあり、nmサイズで加工・制御する技術であるナノテクノロジー(nano-technology)では、電子波の反射や干渉による量子効果が重要になる。ナノ構造中に閉じ込められた電子は、ちょうどその波長とナノ構造のサイズがマッチする特定の条件下にのみ存在するようになる。この効果を量子サイズ効果あるいは量子閉じ込め効果という。ナノの薄膜では、厚さ方向の電子のエネルギーは完全に量子化(quantization)され、電子の自由な運動は面内のみに限定される(二次元電子系 two-dimensional electron system)。量子細線(quantum wire)では電子のエネルギーは二方向に量子化され、電子の自由な動きは細線の方向に限定される(一次元電子系 one-dimensional electron system)。量子ドット(quantum dot)では、電子は三次元のどの方向にも量子サイズ効果で閉じ込められ、どの方向にも運動の自由度を持たないゼロ次元電子系(zero-dimensional electron system)が実現される。