ナノ領域(nm=ナノメートル nは10-9=10億分の1)あるいはそれ以下の計測には、光の波長で分解能が決まる通常の光学顕微鏡は適さず、より波長の小さい電子ビームを使う。電子ビームを用いるものは真空中での観測が必要になるが、透過型電子顕微鏡(TEM ; transmission electron microscope)、走査型電子顕微鏡(SEM ; scanning electron microscope)は原子の寸法からナノの分解能を有する。最新鋭の透過電子顕微鏡は0.05nmをしのぐ分解能を有し、半導体中の一つ一つの不純分分布を見ることもできる。また、原子が見える分解能を維持したまま、加速電圧を小さくすることで、観察対象に与えるダメージを低減する努力もなされており、カーボン系の様々なナノ材料やバイオマテリアルの観察に力を発揮している。感度の関係から空間分解能は制限されるが、電子線照射時に出てくるX線などの情報を利用することで、どのような原子が存在しているかの情報を得ることもできる。角度を変えて電子線透過像を測定し、得られたデータからコンピュータートモグラフィー(CT)の原理でナノスケール立体像を再構成する三次元電子顕微鏡法(TEMT ; transmission electron microtomography)も研究されている。