原子やイオンを1個ずつ操作する技術。細く絞ったイオンビーム、ピンホール、さらに、イオン1個の到達を検出できる技術を組み合わせて、ナノスケール(nm : 10-9m=10億分の1mレベルのスケール)の精度で狙った位置に所望のイオンを1個入れることが実現された。また、ナノプローブを用いてあたかもおはじきを並べるように原子を1個ずつ配置する技術も開発されている。「ドラえもん」に原子と原子をぶつけて遊ぶ「原子おはじき」が登場するが、ここではナノプローブの先端で原子を押したり運んだりする。原子単位でデザインしたナノ構造が作製できる究極のナノテクノロジーとして不純物が規則正しく並んだ半導体構造や単一原子を用いた量子ビットへの応用が期待されているが、構造作製に時間がかかるため、汎用的な技術として広い面積へ応用することは難しい。一方で、通常の方法では安全に合成できない構造を原子操作で実現できる面白みがある。たとえば、六角形の網目状につながった炭素が平坦な三角形状に結合し、周囲に水素が付いたトリアンギュレン(triangulene)は実現不可能と思われていたが、低温下ではあるものの銅表面に安定に形成することができた。