通常の化学ゲルは柔らかいながら強いが、その伸縮性には限界があり、引っ張ると結合の短い部分に強い力がかかり切れてしまう。これに対し、高分子のひもをリング状のナノスケールの「わっか」を通して網状に結合したものを環動ゲルという。最先端の技術を使うと、ポリエチレングリコールという高分子に直径1nm(ナノメートル nは10-9=10億分の1)のシクロデキストリンというナノリングを付けることができる。そのリング同士のみを結合させることで、高分子のひもをナノのリング内で自由に動かすことができる新しいタイプのゲル、環動ゲルが実現された。このゲルは伸び縮みに際し化学結合間に力が働く前にリングの中を高分子のひもが滑るため、これまでの化学ゲルよりはるかに大きな伸縮率が得られ、さらに弱い力で伸縮できる利点がある。衣料などさまざまな分野への応用が考えられている。