欠損あるいは、病気で失った肉体の機能を補うため、細胞をシート状に成長させることにより、移植治療を行うための技術。やけど等の際の皮膚移植用の目的で使用される場合が多いが、角膜上皮細胞や心筋細胞などさまざまな細胞シートが開発されている。今までは、細胞をシート状に培養はできても、それをはがす際のダメージが問題になっていたが、温度で親和性が変わる高分子を用いたシートや、フィブリノーゲン、トロンビンなどの生体物質由来の物質を用いたシートを使用することにより、この点を克服。前者では、容易な剥離(はくり)を、後者では、内因性の酵素による分解により、再生シートのダメージを軽減、移植時の再生能を向上させることを可能にした。複数のシートを積層することによって、組織再生を行う試みも行われており、移植医療が大きく前進することが期待される。実際、国内において、人工心臓を装着している患者への心筋細胞シート移植が行われ、人工心臓を必要としないまでに回復した例が報告されている。また、フランスでは、細胞シートを使用した角膜移植の有効性が確認されているなど、治療への試みが盛んに行われ始めた。最近では、土台となる血管床の上に血管内皮細胞を混ぜた細胞シートを培養することで血管網の形成が可能となり、シートを重ねることで血管連絡のある厚みをもった細胞シートを作り出すことに成功している。