2008年のノーベル化学賞の受賞理由となったGFP(green fluorescent protein 緑色蛍光たんぱく質)の発見により、蛍光観察に基づく一分子レベルでのモニタリングが可能になってきた。モニタリングのための蛍光標識は、たんぱく質やDNAなどにGFPを結合させる方法と、GFP情報を遺伝子に組み込んで発現させる方法との二つに大別される。YFP(yellow fluorescent protein)やCFP (cyan fluorescent protein)、BFP (blue fluorescent protein)など緑色以外の多色蛍光たんぱく質や、半導体の微小構造により蛍光を発する量子ドット(Qdot ; quantum dot)、フルオロフォア(fluorophore)と呼ばれる蛍光発色団などを用いた標識が開発されている。モニタリングには、TIRF (total internal reflection fluorescence)など、光が反射する際にその一部が媒質の内部に染み込むエバネッセント場(evanescent field)を観察することによる分子運動の観察法、あるいは高速AFM(atomic force microscope 原子間力顕微鏡)を用いて分子構造の連続解析を行う観察法、超高速カメラによって分子運動の解析を行う方法などがある。たんぱく質のドメイン(domain 複数の立体構造からなる大きなたんぱく質における、それぞれの立体構造の単位)やサブユニット(subunit たんぱく質分子が複合体となっているときの個々をさす単位)などの一分子内微細構造変化の観察までも可能になってきている。