電子回路と合体させることにより、昆虫の視覚や飛行能力を制御・利用することを可能にした「ハイブリッド昆虫」。脳機能を理解し、直接信号をやり取りすることで飛行や運動制御する昆虫版ブレイン・マシン・インターフェース方式や、脳から下にある飛行関連筋肉に刺激を加えることで飛行制御する方法がある。前者の代表的なものに、イナゴなどのバッタ類の視覚入力と物体との衝突を回避する際の飛行制御信号を利用して衝突回避を行う自走ロボットの研究があり、ロボットと合体させた昆虫はロボットを動かすためのいわばナビゲーターとして利用される。最近では、昆虫だけでなく、培養神経細胞やラットの神経活動を利用したものも報告されている。後者には、カブトムシやカナブンなどの甲虫の筋肉に電極刺激を加えることで、飛行や旋回などの運動を制御することを可能にした研究があり、電子回路により昆虫の生理反応を利用して意思に関係なく能力を借りるタイプの利用法である。制御自体の難しさはあるが、比較的簡単な回路での実現が可能となり、機動性に優れることから、災害現場での探索や偵察用としての利用が検討されている。