軟骨は骨のようにX線を吸収しないので、X線が通り抜けてしまい、映像化することが難しい。しかし、X線が体内を通過する際に「ずれる」特性を利用し、通常では撮影が困難な軟骨を映像化することを可能にしたX線撮影技術が軟骨撮影X線装置。光が水面を通過する際にわずかに進行角度を変えるように、X線も対象物に当たると、その縁などで屈折し、わずかに方向を変える。通常では、直進して進むX線の強度が大きいため、屈折したX線は観察できないが、逆に直進するX線をさえぎり、視野を暗くすることで、わずかな屈折X線を捉えることができ、これをX線暗視野法(dark field X-ray microscopy)という。今までは、指向性の高い放射光(synchrotron orbital radiation 光速近くまで加速された電子や陽電子などが、磁場の影響を受け、その軌道を曲げられる際に放射されるX線)を利用することで、軟骨の画像撮影に成功した報告はある。しかしながら、放射光の発生には巨大な装置を要するため、使える場所や時間が限定されるなどの問題があり、使用条件が限られていた。そこで、X線格子を三つ組み合わせることによって、1000倍ほども感度を向上させ、高感度での「ずれ」検出が可能となった。この技術の確立により、病院などで使用される通常のX線源でも軟骨撮影が可能となり、臨床現場での有効性が期待される。現在、関節リウマチ患者などへの適用が計画されている。