光の最小単位である光子(フォトン)を誘導放出するレーザーのアナロジーとして、機械的振動や音波の粒子であるフォノンを誘導放出により増幅するフォノンレーザー(phonon laser)が実現された。圧電状態を通して振動状態を精密に制御できる微小な板ばねが誘導放出の役割を担うことで、発振周波数に対してそのずれが約200万分の1以下という、周波数のそろった超音波の発振が得られた。レーザーと同様にしきい値が存在することも確認されている。このように、レーザーに類似した原理を用いて高精度の超音波振動を生成する技術をセーザー(SASER)という。レーザーから得られた光が光ファイバーを通し伝わるように、セーザーで得られた超音波を、フォノンを閉じ込めて伝える伝送路に導く手法も示された。まだ、低温での実証であるが、将来的には精密な発振を実現する水晶振動子に代わって、微細な構造で超精密振動を実現できる可能性がある。ほかにも、コヒーレントな(位相がそろった)超音波を用いた新しい伝送技術やイメージング技術への応用が期待される。