2013年、IBMは、原子やイオンを1個ずつ操作するアトムマニピュレーションの原理を用い、銅でできた平面の上で一酸化炭素分子を一つひとつナノプローブで動かすことで、約250フレームをコマ撮りし、長さ1分30秒ほどの「世界最小の映画」を作製した。「A Boy and His Atom(少年と彼の原子)」と名付けられたこの映画は、主人公の少年が原子と遊ぶ様子をストーリーにしたもので、「世界最小のストップモーションフィルム(The World’s Smallest Stop-Motion Film)」としてギネスブックに認定された。動画はIBMのホームページや動画投稿サイトの「YouTube(ユーチューブ)」で見ることができる。平面と分子や原子の結合が強すぎると、アトムマニピュレーションの技術で原子や分子を動かすことができない一方、温度が高いと原子や分子が勝手に動き回ってしまう。今回の実験では、銅と一酸化炭素という理想的な組み合わせを用いて、一酸化炭素をちょうどよい温度(-268℃)でナノプローブ操作することにより、きれいなフレームを作成している。よく見ると、操作された分子によって銅の中の電子の波が反射され、干渉パターンが生じていることもわかる。精密なアトムマニピュレーションは少数原子を用いた究極のメモリーにつながる技術としても期待されている。