皮膚は、体内からの水分の蒸発や、体外からの異物の侵入を防ぐ働きをもつ。その働きは、主として角質層(皮膚の外層)の厚さによって異なることが知られている。そのため、皮膚を通して薬を吸収させる、いわゆる経皮吸収(cutaneous absorption ; percutaneous absorption)を効率よく促進させるためには、できるかぎり皮膚の内側に薬剤を供給する必要がある。アメリカでは軍事利用を目的として、パルス電界と注射針とを組み合わせて薬剤を急速投与する方法や、強度と生体適合性を兼ね備えるチタンなどの金属針による薬剤投与法の開発に取り組んできた。しかし、金属と生体とは親和性がないため、注射針との反応を考慮すると、金属を利用しない投与法の必要性が増し、ヒアルロン酸やコラーゲン、コンドロイチン硫酸などを主成分とする、生体内で溶解する材質による注射針の開発が検討されてきた。富士フイルムが開発したマイクロニードルアレイは、100~2000μm(マイクロメートル:100万分の1m)の長さの微細なニードル(注射針)を多数配置したシートで、生体内で分解する物質をニードルに使用し、それらに薬剤を内包することで、皮膚に貼るだけで、痛みなく薬剤を体内に投与できる。将来的には、ワクチンやホルモンなどの医療面での利用の他、スキンケアなどの化粧品としての活用も期待されている。