正確に制御された方法によって、膜厚が正確な薄膜を原子層のオーダーで堆積する技術。これを実現する装置を原子層堆積装置(atomic layer deposition apparatus)という。たとえば、アルミニウムの酸化膜であるアルミナを堆積する場合、はじめにトリメチルアルミニウム(TMA)をある平面素材上に流すとTMAがその表面を覆うが、一層のTMAが全面を覆うと、これ以上は積層しない。ここで、(1)窒素を流せば、余っているTMAを除去でき(「パージする」という)、(2)次に、水あるいはオゾンを流すとTMAのメチル基が離れてアルミニウムが酸化され、(3)一層のアルミナ膜ができる。(4)次に、残っている水やオゾンをパージして、その後に再びTMAを供給する。(5)この操作をN回繰り返すと、正確にN原子層のアルミナが堆積することになる。これが原子層堆積の原理で、パージをきちんと行わないと精度が出ないため、堆積に時間がかかる問題はあるが、原子層のオーダーで正確な薄膜が堆積できる技術として注目されている。この製造工程にはガス状の原料の吸着を利用するので、凹凸のある試料や側面にも膜がきちんと形成され、ピンホールなどが少ない高被覆性が実現できる。半導体デバイスの絶縁膜の形成などを目的として幅広く用いられており、多種多様な原料を用いることで、さまざまな酸化物、窒化物、さらには金属の原子層堆積が実現されている。