電子回路を薄膜化することで皮膚に貼ることができる、薄膜パッチのような柔軟性を有するデバイスを指す。ポリエステルやポリエチレンテレフタレートなどの高分子フィルム基板上に電子回路を構築、もしくはプリントすることで、心電図(ECG ; electrocardiogram)や脳波(EEG ; electroencephalogram)、筋電図(EMG ; electromyography)、それらのひずみや温度などの情報を収集することを可能にしている。1~2μm程度の極薄フィルムにより、直接皮膚に貼り付けることもできる。また、最近では、アメリカのベンチャー企業MC10社が開発した、電子回路を皮膚にスタンプする「バイオスタンプ(BioStamp)」も報告されている。この方式の場合、上からコーティング・スプレーを吹きかけることで防水仕様となり、2週間程度使用できる。
このような電子皮膚は人工皮膚やスマートスキン(smart skin)とも呼ばれ、身につけていることをあまり意識せずに済む端末となる。健康状態の監視にとどまらず、脳に貼れば、高感度の脳波計として、また外傷の付近に貼れば、計測した体温の様子から炎症や感染の初期兆候の把握ができる。ほかにも、心臓に貼れば、心臓活動の把握を行うなど、幅広い利用が考えられる。東京大学の染谷隆夫教授が取り組むフィルム型センサーの「フレキシブルエレクトロニクス」(flexible electronics)、アメリカのイリノイ大学のジョン・ロジャース教授らが開発している皮膚に貼り付ける発光ディスプレー様の表皮エレクトロニクス「EES(epidermal electronic system)」、カリフォルニア大のトッド・コールマンらによる、皮膚に直接回路をプリントする「電子タトゥー(Electronic Tattoo)」の他、シルクを利用した東北大学の鳥光慶一教授らが開発を進めるシルク製のセンシング電極による「COC(Chip on Clothes)」など、長時間にわたってさまざまな生体情報を取得することを目指した各種の開発が進んでいる。
検出対象も、電気信号のような物理的な情報だけでなく、汗や血液、だ液などの体液に含まれる特定分子をトランジスタで検出する化学計測にも広がりを見せており、今後新たな「人体エレクトロニクス」という技術分野が確立することが期待される。