従来の血液検査では、血中成分分析のために採血や血糖値計測のように、針を刺して微量の血液を専用器具に採取する必要がある。しかし近年、指先などをプローブではさむパルスオキシメーター(pulse oximeter)のように、血液を採取することなく、近赤外光を用いることで非侵襲での血中酸素濃度測定を可能とする技術が開発され、実用化されている。産業技術総合研究所では、この近赤外光の微弱な変化でも検出可能なフーリエ分光法を用いて血液を分光分析することで、血中に含まれる脂質をリアルタイムでモニタリングすることに成功しており、採血することなく健康管理ができる技術として注目されている。なお、フーリエ分光法(Fourier spectroscopy)とは、ある特定の波長の光が対象の物質の化学構造や結合に合致した場合に共鳴吸収される性質を利用して、透過または反射された光を分析することで物質の同定・定量を行うものである。この方法の場合、現在では分析可能な物質は脂質に限られるが、今後は血糖値などの血中成分にまで分析対象が広がることが期待される。