生体に由来する機能性物質を人工的な機器と融合し、化学物質を電気的な信号として抽出するセンサー。(1)生体の受容体たんぱく質(receptor protein)、すなわち細胞の表面にあって、外部からの化学物質と結合して取り入れる役割をもつたんぱく質を人工的な膜環境へ導入すること、あるいは単一の細胞自体にその役割を発現させて人工的な膜環境へ導入することで、特定の匂いに反応したとき、受容体や細胞が発する電気信号をパッチクランプ法(patch-clump method)によって計測する。また、(2)スフェロイド(spheroid)と呼ばれる特定の微小な細胞のかたまりをジメチルポリシロキサン(PDMS)基板の上に形成させ、同様の電気信号を計測する方法もある。パッチクランプ法とは、微小なガラス管の中に取り付けた電極を膜に密着させて、膜にかかる電圧や膜を通る電流を計るもので、細胞センサーでは電位変化によって匂い物質の有無や濃度を検出する。
東京大学先端科学技術研究センターの神崎亮平教授らは、(1)の方法で昆虫の性フェロモンの検出に成功しているほか、同大学生産技術研究所の竹内昌治教授らは(2)の方法でマラリアを媒介するハマダラカが反応する2-メチルフェノールの検出に成功している。高感度の匂いセンサーとして、今後農業や食品安全検査、病気診断などへの展開が期待されている。