神経を電気的に刺激することで炎症を治療したり、障害を克服したりする方法のこと。薬物を使用せず、神経電気刺激のみで疾病の改善が見られることからショックメディスン(shock medicine)とも呼ばれる。リウマチなどの自己免疫疾患や炎症性疾患を引き起こす腫瘍壊死因子(TNF)は、免疫反応としての炎症を引き起こす分子の一つであり、通常ステロイドなどの免疫抑制剤を用いて治療するが、近年、神経を電気的に刺激することで、これらの薬剤を利用せずに体の神経反射を利用し、治療効果が得られることが明らかになってきている。それは、薬による副作用などの心配がないことが期待されている治療法でもある。
現在、免疫系と神経刺激の関連性に注目が集まり、いくつかの特定の神経への刺激により、特定の臓器の免疫反応が変化する仕組みが明らかになりつつある。アムステルダム大学アカデミック・メディカルセンターのポール・ピーター・タークとフリーダ・コープマンは、2012年、薬剤に代えて埋め込んだ刺激装置から迷走神経を刺激することで関節リウマチが改善することを報告している。加えて最近では、炎症性腸疾患に対する補助的治療法としての報告や、迷走神経を刺激することで満腹感を誘発する装置のFDA(アメリカ食品医薬品局)による承認がなされている。さらに、NIH(アメリカ国立衛生研究所)によるバイオエレクトニック医療プログラムのSPARC(Stimulating Peripheral Activity to Relieve Conditions)やDARPA(国防高等研究計画局)による神経利用健康推進プログラムのElectRxなど、関連研究が推進されている。