組織の酸素状態、特に低酸素状態ががんの生育に密接に関連していることが報告されている。このような環境で生育したがん細胞が放射線治療への低感受性をはじめ、抗がん剤への抵抗性などを示すことから、その治療に向けて、組織および細胞内の酸素濃度、特に低酸素状態を明らかにすることが求められている。リン光は、色素分子が光(励起光という)を照射され、励起三重光状態というエネルギー準位になってから起こす発光現象であるが、酸素分子との間でエネルギー遷移が生じるとリン光の強度や寿命が減少するため、酸素濃度との相関性があることが知られている。リン光の強度を利用した測定法では、リン光を発する色素の、たとえばポルフィリン化合物などを導入して、共焦点レーザー顕微鏡などを使って観測することで、そのリン光の強度から細胞内酸素濃度分布の計測が可能となる。この方法の場合、簡便である半面、微細な粒子は凝集する性質をもつため、導入した色素分子が偏在して細胞全体の酸素濃度を見るのが難しいなど、問題もある。一方、リン光の寿命を利用した測定法では、細胞内の色素分子の濃度分布による影響を受けないことから、より細胞内酸素濃度イメージングに適している。